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はじめに

「価値の交換」から「物語の共有」へ

2021年から2022年にかけて投機の対象として注目を集めたNFTは、現在ではデジタル資産のエコシステムの一部として進化を遂げつつあります。それを象徴するのが、企業や政府の活用事例です。たとえば、ファッションやスポーツの分野では、特定の商品を購入した顧客に限定のデジタルアイテムを提供することで、従来のポイントカードや会員制度に代わる新たな顧客体験を提供しています。また、地域資源や文化財のデジタル資産化に取り組む自治体も現れ、観光促進や地域コミュニティ活性化の分野での事例が増えています。

デジタル資産は、個人ユーザーの間でもこの数年で普及が進みました。2025年現在のウォレット数は約5億を超え、これは2022年時点の倍に達する数字です。もちろん、ウォレットは一人でいくつも作成できるため、ユニークユーザー数とは言えませんが、かつて一部の投資家や技術愛好者の関心を集めるに留まっていたデジタル資産が、アートやゲームといったエンターテインメントの分野にも広まり、より多くのユーザーにとっても次第に身近なものになってきたことは間違いありません。

こうした企業・政府・個人の動向は、デジタル資産がかつてのような投機の対象としてのみではなく、さまざまなサービスのエコシステムを構成する一部として居場所を見つけつつあることを示しています。そのなかでも特に「価値の交換」は「コイン」で、「物語の共有」は「NFT」で行われるという役割分担もはっきりしてきました。それによってNFTは、以前よりもさらに価値観やアイデンティティを共有する”メディア”として機能しはじめました。私たちがNFTに注目している理由は、まさにその点にあります。

ところが現在、デジタル資産を代表するヒットサービスとしてまっさきに思い浮かぶのは「ミームコイン」です。ミームコインは、「情報技術が生み出したプラットフォーム企業」と「関心経済のニューリッチたち」という組み合わせにとってまたとない道具となり、独特な魅力で多くの人を惹きつけています。しかしそれは、分断を発生させる仕組みでもあります。分断から感情的エネルギーを取り出す技術と、自己の影響力を拡大する技術。これらが行き過ぎることで、結果として、同じ世界に暮らす人々がひとつの社会を営むことがますます難しくなってきているのが現実です。

これに対抗する手段として、私たちが提案したいのは「共に創る」という行為です。消費や投資に明け暮れるのではなく、共に生産し、共に運営すること。それを身近な人々と行い、さらにその活動を重ねること。それによって、いまや現実世界まで覆い尽くしてしまったいびつな情報空間のなかに、異質でオルタナティブな場所を守ることができるのではないかという予感をもっています。

その方法のひとつとして、物語を共有するメディアとしてのNFTを活用することが有効だと私たちは考えています。たとえば、地域に伝わる神話や民話を再創造するプロジェクト、地場産業の歴史を背景に行政区の垣根を超えたコラボレーション、全国の町や市をつなぐまち歩きゲーム、絶滅危惧種の保護活動が結んだアートと循環経済のプラクティスなど。ひとつひとつは小さなことでも、身近な人々と共に作り上げた異質でオルタナティブな場所は、同じ世界に暮らす人々がひとつの社会を営んでいくために欠かせない「余剰」であると、私たちは考えています。その余剰は、「関心経済」や「見逃す恐怖」ではない方法でコミュニティを結びつける役割を果たすことができます。

その余剰を共に創る手段のひとつとして、T&TはブロックチェーンやNFTを誰にでも扱いやすくするサービスを提供していきます。その裏付けとして、このWhitepaperでは技術情報とユースケースをご紹介します。